Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 : 次世代型のシークエンサーなどの開発により, 自分自身のゲノム情報が短期間に安価に入手できる1000ドルゲノム時代が到来している。また, 医療機関を経由しないでその情報にアクセスできるDTC(Direct-to-consumer)型の遺伝子診断の普及という新たな社会状況も生じている中で, 一人一人の国民が科学的に正しい判断を行えるよう, 〈アクティブ・ラーニング〉の手法を用いた, 遺伝教材の開発実践について研究することを目的としたものである。 ○研究方法 : まず, ペア・ワーク, Think-Pair-Share, ジグソー法, ポスターツアー, ピア・レヴュー等の〈アクティブ・ラーニング〉の手法の導入について検討し, 遺伝分野を中心に, それらの手法を用いた教材を開発するとともに授業を実施した。また, アメリカのNIHがBSCSと共同で開発したモジュール型教材である“Exploring Bioethics”の中で, 遺伝子診断に関係する部分を翻案し, <アクティブ・ラーニング>型教材として使用した。さらに, アンジェリーナ・ジョリーの予防的乳房切除や出生前診断などの記事を使ったNIE(新聞を教育に)活動を遺伝分野の授業として行ったり, 京都大学医学部と協力して遺伝カウンセリングについて, カウンセラーや医師によるロール・プレイ等の授業を行った。また, 復習用・反転授業用のICT教材の利用や開発も同時に行った。その上で, 各授業についての, 生徒の振返りシートや感想, 考査等における生徒の理解度の変化, 遺伝分野特にヒトの遺伝に対する生徒の理解や態度の変化について検討を行った。 ○研究成果 : 生物の授業におけるペア・ワークやThink-Pair-Share, ピア・レヴューの導入については, 生徒が積極的に取り組み, また肯定的な振返りが多く見られた。ただ, ルーブリックを用いて生徒同士の評価をさせたが, 生徒間の人間関係などが到達内容差以上に反映される面が見られた。モジュール型教材は, 内容的によく出来たものだったが, レベルと時間の関係で十分な成果は見られなかった。NIE活動については, 多くの生徒の関心・興味の向上と態度の変容が見られた。ただ, 科学的に正確な理解と授業後の定着という面では課題が残った。遺伝カウンセリングは, 専門家による授業なので, 生徒に好評であり, 卒業後のトランジション教育としても, 十分意味があったと思われる。ICT教材はDVD教材は生徒に好評であったし, 自作教材も, 一定の教育効果はあったものの, 十分再現性ある効果というレベルには到達できなかった。
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