本研究の目的であったシーケンサーモジュールを活用した簡易放射線測定器の開発において線量のデータ収集と補正には成功したが、バックグラウンド線量が高い地域においての空間線量測定でアロカ社製エネルギー補償シンチレーション式サーベイメータと数値を比較すると、開発した測定装置ではセンサーの方向依存性のバラつきが大きく、線量を過大又は過小評価してしまう傾向があり、どういう補正プログラムをいれても上記のサーベイメータと同じ傾向にするまでには至らなかった。高精度の空間線量測定には高感度のセンサーが必要であったことが明らかになった。しかしながら、サンプリングした土壌サンプルを直接測定した際の値は補正により同程度の値を検出できることがわかったので空間ではなく目的物質の線量測定には十分対応できる測定器であるといえる。東日本大震災による福島第一原子力発電所の爆発事故から約5年。福島県の浪江町に立ち入り土壌サンプル採取とバックグラウンド測定を実施したが、浪江町は今も5年前の震災時の姿のままであった。今回の研究の経験を若手技術職員に伝え、来年度以降に向けても今回購入したシーケンサーモジュールやガイガーカウンターを活用することができるようにこのテーマをさらにブラッシュアップして若手技術職員に継承していく予定である。なお、今後も地域住民や学生に向けた学内の放射線の取り扱い知識向上のための講習やポスターセッション等を通じて知見を発展させ、研究代表者自身も若手技術職員も成長でき、地域の人たちの放射線やモノづくりに関する知見向上にとっての良いPDCAサイクルを継続していきたい。
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