Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 情報技術教育において, OSや組込みシステムなどのシステムソフトウェア学習を, ロボットの挙動などを利用し、学習者の理解を支援, 促進する環境の学習効果を検証することである. システムソフトウェアは動作が直接見えないため, 従来のテキストや実習装置ではシステムソフトウェアの内部動作や構造のイメージがつかめず, 内部動作の概念の理解が難しい現状がある. そこで本研究では自律型の自走ロボットの挙動を利用し、システムの内部動作を可視化することで, システムソフトウェアの動作概念を挙動によって具体化した教材環境の開発, 実践, 評価を行う. PCおよびLEGOロボット(以下LEGO-Mindstorms)を利用し, ロボットの挙動のビデオキャプチャによって動作の再現性を確保し, ロボットの内部動作, ソースコード, 挙動を一元的, 直観的に理解できる環境を整えた. これにより, システムソフトウェアの概念を視覚的, 直観的に理解することができることを明らかとする. 研究によって次の2点が明らかとなった. ・内部動作の可視化によって生徒の理解が促進されることを確認した 本環境を用いた母集団と, 従来環境を用い母集団とで評価実験を行った. 本環境を用いた場合の課題クリア時間が最も短く, ソースコードの改善, パラメータ調整の回数が最も少ない. また、アンケート結果においても生徒が直観的に理解できていることが明らかとなった. 可視化環境では, 生徒が開発したロボットのソースコードや設定したパラメータがどのような状況で動作に関連しているのかを本環境によって示すことができることから, 原因の特定が容易になっていると考えられる. ・統合的な教育環境が導入教育では必要であることを確認した 専門系の学科を設置する高校では, 専門科目において導入段階で躓いてしまった生徒は, 発展的な学習や実習について行けず, 学習意欲を低下させる場合が多い. 本環境は生徒のアンケートからは学習効果に肯定的な評価が多く, 生徒の学習意欲を維持向上させるのに貢献していることが明らかとなった. ロボットや, 可視化および統合環境を提供し, 制御やシステムの動作を分かりやすく示すことで, 生徒が初期段階で躓くことを防いでいる. このことから統合的かつ直観的に学習できる環境によって, 導入教育段階において生徒の理解を促進することができることを確認した. また, ロボットのように興味を引く教材を用いることで, 生徒の学習意欲を得ることができることを確認した.
|