Outline of Annual Research Achievements |
1 研究の目的 変化の激しいこれからの社会を生きる子どもたちには, 「生きる力」「確かな学力」を育むことが必要である(文部科学省, 2008)。「生きる力」の要素の一つである「確かな学力」をつけることは, 知的障害特別支援学校においても小・中学校同様に大変重要なことであると考えられる。特に, 文字の読み書きや計算などのアカデミックスキルを確実に身に付けることは, 自立や社会参加を主目的とする特別支援学校の教育においても必要不可欠的である。中でも, 書き言葉の習得は全ての教科学習に深く関与しており, 思考力・判断力の発達にも影響を及ぼすとも言われている(坂野, 1997)。 そこで, 本研究は, 知的障害特別支援学校に在籍する生徒に2013年に標準化された日本版KABC-Ⅱ検査を実施し, 生徒の認知特性を生かした長所活用型指導を実施することで, 知的障害のある生徒の文字の読み書きの困難性を改善し, 文字習得の向上を目的とした。 2 研究方法 (1)対象児 : 知的障害特別支援学校高等部2年生に在籍する男子生徒 (2)指導期間 : 平成27年月から平成28年3月まで (3)指導漢字 : 文化庁漢字頻出表1位から1000位までの漢字200字 (4)アセスメント : KABC-Ⅱ検査 3 研究成果 漢字200字中正しく書くことができなかった漢字50字について対象児の認知特性に合わせて学習した。対象児の得意な認知特性である同時処理能力並びに視覚処理能力を活用し, 漢字の偏と旁, 形態を意識できるような色分けや漢字間違い探しを行いながら指導にあたった。その結果, 指導20回で誤答となった漢字50字について書くことができるようになった。今回, KABC-Ⅱ検査を実施し知的障害がある生徒の認知特性を把握し, 得意な認知特性を生かした長所活用型指導を行うことで, 漢字の書字能力を向上させ, 教育的な指導効果をさらに高め, 文字の読み書きの能力を向上させることができることを示唆する成果を得ることができた。
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