Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究目的 特別支援学校(知的障害)高等部に在籍する軽度知的障害生徒に対し, 合理的配慮をただ享受するのではなく, 必要な配慮を自ら要請できるようになることをねらい, 自作テキストによる学習及び配慮提供システムの整備を行った。本研究の目的はその効果を検証し, 成果と課題を明らかにすることであった。 2. 研究方法 (1)対象者 : 高等部1年次に在籍し, 会話が可能な生徒5名(A~E)。(2)配慮提供システムの整備 : 教務部を担当分掌とし, 学習前後に申請期間を設定した。また, 申請用紙や申請後の認定基準を整備し, 申請手順を学習テキスト内に記載した。(3)テキスト教材 : A4版縦使用, 1ページあたり600~800文字とした。内容は「自己理解」「権利」「援助要請」で構成され, それらは更に3つのステップに分けられた。(4)指導手続き : 生徒A, B (学習あり群)は, 1ステップ約20分を原則とし, 文章の音読, 教師との質疑応答, テキストへの直接記入等により学習した。配慮要請意識に関する質問紙(5件法のリッカート尺度)を実施した得点及び合理的配慮の申請件数について, 学習前後の比較, 生徒C~E(学習なし群)との比較を行った。 3. 研究成果 学習あり群の生徒は2名とも「援助要請」「権利」の配慮要請意識に関する項目が2得点以上増加した。また, 2名とも学習前は配慮申請がなく, 学習後に認定可と判断される申請がそれぞれ2件ずつ自発するなど一定の肯定的な変化が確認された。一方で, 学習なし群の生徒と比べ, 配慮要請意識全体の平均得点に差異はなく, 明らかな学習効果は確認されなかった。軽度知的障害のある生徒が自ら配慮要請をするためには, 自己の障害や困難さに気づき, 適合した配慮を本人自ら考案しなければならない。「自己理解」や「援助要請」といった内容ではテキストベースの学習に加え, 疑似体験やロープレイ等の体験的な学習方法を併用する等, 新たな改善点が示唆された。
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