Outline of Annual Research Achievements |
単結晶は、Pr_<1.3-x>La_<0.7>Ce_xCuO_4(x=0, 0.02)の組成で、浮遊帯域溶融(TSFZ)法を用いて育成を行った。原料棒及びソルベントは固相反応法により作製した。後に原料粉末をゴムチューブに入れ長さ150mm、直径7mmに静水圧プレスにて成型し、焼成を行い作製した。単結晶の育成において、ランプの出力、ガス雰囲気、ソルベントの組成などの育成条件は、育成を重ねながら適切なものに絞った。育成条件としは、ソルベント組成を(Pr, La, Ce)_2O_3:CuO=3:7で作製し使用した。育成速度を0.5mm/h, 上棒回転数20rpm、下棒回転数10rpmで行い、育成雰囲気として、空気中およびAr+O_23%ガス雰囲気においてx=0, 0.02の組成での120~130mmの単結晶育成に成功した。また、Ar+O_21%ガス雰囲気においてx=0の組成で育成を試みたが得られていない。今後もAr雰囲気も加えランプ出力等の条件を絞りながら育成を試みていく予定である。 得られた単結晶の一部を粉砕し、粉末X線解析を行い単相であることを確認した。T'型銅酸化物は、試料中の過剰酸素を還元アニールにより除去することで超伝導が発現する。得られた単結晶を用いて、最適還元アニール条件を探すために、我々が開発したプロテクトアニール法を用いて温度750℃~850℃で変化させ24h真空中(1x10^<-6>torr)で行い、その後に真空中400℃48h, 96hの低温アニールを行った。その後単結晶をab面にそって切り出しx線解析より格子定数c軸長の見積もりを行った。x=0における還元条件でのc軸長を還元前試料と比較するとプロテクトアニール後の試料では、過剰酸素が除去されたことでc軸長が減少した。また、低温アニールを追加することでc軸長がより減少している。これは、プロテクトアニールによって過剰酸素だけではなく、CuO_2面内の酸素も抜けてしまうと考えられ、低温アニールによって過剰酸素がCuO_2面内の酸素欠損サイトに移動することでc軸長が減少していると考えられる。 電気抵抗率の温度依存性ではx=0, 0.02の還元前試料では、両組成とも温度の低下とともにρ_<ab>が上昇する半導体的な振る舞いが見られる。また、x=0においては、プロテクトアニールや低温アニールを施した試料では抵抗率の絶対値が大きく減少しているもの、半導体傾向は変化しないが、x=0.02においては温度の低下とともにρ_<ab>が現象する金属的な振る舞いが見られたが、超伝導の発源には至らなかった。プロテクトアニールと低温アニールの2段階アニールによりx=0.02で電子ドープで金属的振る舞いが見られたことから還元方法を今回、高真空状態で行ったが、低真空状態でも行うなどの検討、工夫することでx=0, 0.02で超伝導化する可能性が高いと考えられる。
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