Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究目的 ステアリン酸単分子膜を用いてアボガドロ定数(NA)を求める実験は広く知られているが, 膜が円形にならないために正確な面積を測ることが難しい。そこで, 我々の身の回りにあるシャボン玉に着目した。シャボン玉は球体で, 二重膜構造をとることから, NAを求める新規な方法開発が可能と考え, 教材化を試みる。界面活性剤にはオレイン酸ナトリウム(SO)を用いる。 2. 研究方法 (1) 濃度を調製したSO水溶液の表面張力と粘度を, それぞれジョリーばねばかりを用いて測定する。(2)シリンジにストローを装着させ, 一定体積の空気を送り込み, ほぼ均一な大きさのシャボン玉を作製する。(3)シャボン液の質量変化に応じてストローの角度が変化する装置を組み, 紙分銅と0.1mm定規を用いて1個分のシャボン玉液の質量を求める。(4)シャボン玉の形成過程を撮影し, 読み取り用のスケールと鏡を用いて, シャボン玉の半径を求める。(5)シャボン玉が球体で, 膜厚が極小で無視できるとみなして表面積を求めた。(6)1個分のシャボン玉の表面積をSO1分子あたりの断面積(オレイン酸での値)で割り, 膜を構成するSOの数を求める。(7)SOの分子量で1個分のシャボン玉液の質量を割り, シャボン玉表面のSOの物質量を求める。(8)求めた1個分のシャボン玉の膜を構成するSOの数をSOの物質量で割り, NAを算出する。 3. 研究成果 実験から得られたアボガドロ定数の最近値は5.5×10^<23>/molであり, SO濃度が約2×10^<-2>mol/Lのときであった。表 面張力は約29dyne/cmで, 市販のシャボン液の約21dyne/cmより大きい値となった。作製したシャボン玉はグリセリンなどを含む市販のシャボン液に比べ, シャボン玉の寿命が著しく短かった。今後は, シャボン液の流下を抑える条件を中心に, 実験環境を変化させて最適条件を模索する必要がある。
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