Outline of Annual Research Achievements |
<研究目的>酸化物半導体などの薄膜を改質するためのレーザ照射条件を決定するためのデータベースを作成する. レーザ加工は切断や異種金属の接合等に応用されているが, 近年, 薄膜半導体の急速加熱・急冷, 局所加熱技術として脚光を浴びている. しかし金属切断に比べ膜厚が薄く, 下地材料への影響を考慮する必要があることから, 切断とはレーザ照射条件が大きく異なり, 試行錯誤的に行うため条件設定に多大の時間を要している. そこで本研究では, 半導体など薄膜のレーザ改質に適用できるデータベースを構築し, 教育研究に貢献すると共に, レーザ加工技術の半導体分野への展開一助とすることを目的とする. <研究方法>試料には高純度銅(t0.1mm)を用い, レーザ加工機(三菱電機, ML806T)を用いてレーザ照射を行った. レーザ照射条件には出力, 周波数, デューティ比, 焦点位置, 焦点距離, ビームモード, 送り速度, ガス種, ガス圧力などのパラメータがあり, 全てのパラメータを変化させると非常に多くの組合せになるので, 出力, 周波数, デューティ比などのパラメータについて系統的に検討を行い, その他パラメータについては固定した. Cu表面でのアブレーション発生とCu_2Oなどの酸化物層形成に夜変化は目視により, また, 生成層の同定には, 紫外-可視-近赤外分光光度計(日立, U-4100)を用いて測定した吸収曲線から評価した. <研究成果>行った全ての条件下においてレーザアブレージョン効果は認められなかったが, (CW出力, 300W, 焦点+50mmディフォーカス, シングルモード, 送りF1000)においてCu板表面の変色が認められた. 分光光度計による測定では, 波長600nm程度から吸収が認められ, この波長はCu_2O半導体の吸収端に近いことから, 直接遷移型半導体としてバンドギャップを求めたところ, Cu_2Oに相当する2. leVが得られた. Cu-Oの800℃以下での平衡相はCuOであるが, CuO生成は認められず, 酸素分圧の低い領域で生成するCu_2O層が得られたことは還元性雰囲気が形成されていることを示唆している. しかし, Cu_2O層は次世代太陽電池の光吸収層として期待されている材料であることから, 新規な酸化物生成技術としての可能性も示唆しており, さらなるレーザ照射条件データベースの充実が必要であることが明らかとなった.
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