Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の除染に着目した. 放射性物質により河川, 湖沼, 海, そして土壌が汚染されたわけであるが, 放射性セシウムやストロンチウムは半減期が約30年と比較的長いことから, 長期的な被曝による人体への悪影響が懸念されている. そこで, 海底等における底泥の除染手法の確立を目指した. まず, 最初に取りかかったのは, 今までの研究の問題点を把握し, 論文等で情報収集を行った. 次に試験方法を検討し, 以下の方法で試験を実施した. 底泥の上に除染シート(開発済)を敷き, その上に, 海底から海面方向に上昇流を与えるデバイスを設置して, 土壌中の物質を積極的に除染シートに吸着させるという手法を用いた. 試料としてはアパタイトを含有した除染シートを用いた. 小型容器に天然のストロンチウムを含ませた土壌を設置し, 人工海水を投入した. 人工土壌は除染シートに接するように配置し, 小型ポンプによりエアレーションを行った. エアレーションを行うことにより, 人工海水を攪拌し, 土壌の表面を攪拌させた. 一定時間実施後にて吸着評価を行った. 各種条件(ストロチウムの濃度, エアレーションの有無, エアレーション量, 試験時間等)を変化させて試験を実施し, ストロンチウムの吸着量の定量評価を行った. ここでは, エアレーション量, 試験時間を変化させて試験を行い, 吸着特性だけでなく, 最適な吸着条件について検討を行った. 分析は原子吸光分析装置およびICP(誘電結合プラズマ分析装置)を用いて溶液中のストロンチウム量を定量し, 除染シートの除去率を算出した. また, SEM (走査型電子顕微鏡に付属したEDS : エネルギー分散型X線分析)を用いて, 除染シートに吸着されたストロンチウムの定性評価を実施した. 試験結果と分析結果について総括し, 最も合理的な試験条件や試験方法について検討を行い, 以下のとおり, 結論を導いた. エアレーションと吸着材を組み合わせた試験体の残存率の差分が, 以前に行ったセシウムを用いた場合に比べて, ストロンチウムを用いた場合の方が大きくなった. また, 人工海水で行った場合, 純水使用の場合と比較して, 残存率が最大30%程度高くなり, 吸着材にうまく吸着出来なかった. 最大で70%残留した. 結果を踏まえ, 吸着材の設置方法に問題があり, そのため吸着材にストロンチウムを効率よく吸着できなかった可能性も否定できないため, 今後は養生期間の延長と吸着材の設置方法について検討を行っていく予定である. また, 吸着材の形状等についても検討を行っていく予定である.
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