Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 : 本研究では千葉演習林内に自生するヒメコマツ天然木を対象に、個体密度および個体間距離が変化すると自然交配種子の自殖率がどのように変化するかを調べ、当地域における現存ヒメコマツの種子生産の特性を把握することで、多様性が高く稔性の高い種子を生産できる可能性について検討をおこなった。 ○研究方法 : 本研究では以下の3項目に分けて実験をおこなった。 個体密度の時間的変化 : 1978年から2014年にかけ継続的に生育状況の調査をおこなっている荒樫地区の個体(PP10, PP13)を中心として、周辺木の生育状況を年代毎にプロットしArcGISをもちいて半径500m以内の1個体を父親候補木を推定した。 発芽試験 : 荒樫地区の個体から生産された種子を用いて、年代別(2005, 2008, 2013)と家系別(PP10, PP13)に区分し、一処理あたり8粒とし2反復でおこなった。培地は濾紙をしいたシャーレ上でおこない、25℃暗黒湿潤状態でおこなった。発芽種子からは子葉または胚を採集した。 遺伝解析 : 発芽試験から採取した試料から、Maxwell 16LEVPlantDNAkitをもちいてDNAを抽出し、マイクロサテライトマーカーによる父性解析をおこなった。 ○研究成果 : 個体密度の時間的変化では、父親候補木がPP10が2005年が7本、2008年が7本、2013年が5本であった。PP13が2005年が7本、2008年が7本、2013年が5本であった。500m以内の父親候補木は減少していた。発芽試験ではPP10が2008年で31.3%、2013年で43.8%であった。PP13が2005年で0%、2008年で12.5%、2013年で62.5%であった。年代の新しい種子ほど発芽していた。遺伝解析では単純排除法による自殖率の推定をおこない、PP10が2008年で93%、2013年で89%、PP13は全て自殖と推定された。 以上のことから、個体密度は減少しつつあるが、比較的新しい種子であればある程度は発芽するが、殆どが自殖種子であることが推測された。
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