Outline of Annual Research Achievements |
牧草の放射性Cs吸収を抑制するには, Csに競合するカリウム(K)を施用することが効果的であるが, Kの多量施用は牧草中K濃度の上昇を招き, グラステタニーの発生が危惧される。そこで本研究では, K以外の肥料で放射性Cs濃度を低減することができないか, 検討を行なった。 試験は東北大学川渡フィールドセンターで実施した。この圃場の土壌は非アロフェン質黒ボク土である。2015年6月23日(一番草収穫後)に, 処理区として, ①炭酸カルシウム区(500kg/ha), ②ゼオライト区(500kg/ha), ③苦土石灰区(500kg/ha), ④塩化カリ区(90kg K20/ha), ⑤熔燐区(50kg P205/ha)および⑥無処理区を設けた。処理区①から⑤では, 6月25日, 8月5日および10月21日に通常の施肥に加えて表記の量を表面散布した。6月24日, 7月26日および9月16日に植物体サンプルを採取し, 牧草生産量, 放射性Cs濃度, ミネラル含量を比較した。 牧草生産量, 牧草中放射性Cs濃度に処理間差は認められなかった。しかし, 二番草では放射性Cs含量の高い地点が無処理区でみられた(478 Bq/kg DM)のに対し, 施肥をした全ての区では14-192 Bq/kg DMであった。ミネラル含量に有意な処理間差は認められなかったが, K含量は塩化カリ区(29.9-34.6g/kg DM)で最大, 苦土石灰区(22.9-24.6g/kg DM)で最小となり, Ca含量は炭酸カルシウム区(4.7-5.7g/kg DM)が他区(3.6-4.6g/kg DM)にくらべ高く, Mg含量は三番草において苦土石灰区(4.9g/kg DM)が他区(3.0-4.1g/kg DM)にくらべ高い値を示した。その結果, 二~三番草のK/(Ca+Mg)当量比は苦土石灰区(1.1)よりも塩化カリ区(1.6-2.1)で有意に高かった(P<0.05)。 以上より, 耕起除染草地に炭酸カルシウムや苦土石灰を施用することにより, 牧草中放射性Cs濃度の上昇を抑制し, かつ草中ミネラルバランスを適正に保つことができる可能性がある。
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