Outline of Annual Research Achievements |
1960年代以降, ブナ林の効果的な更新を促進することを主な目的として, 母樹の保存とササなどの林床植生の除去を組み合わせた, 皆伐母樹保存法が展開されてきた. しかし, ブナの発芽率や実生定着率は, ササ類による被度以外によっても変化すると考えられる. たとえば, 林床リターの多い場所ほど, そこに貯まっている種子の発芽率が低いかもしれない. そこで, 放牧やカラマツ造林のために, 大半のブナ林が伐採され, ごく一部の残されたブナ林が存在する長野県上田市菅平高原大洞地区において, 林床リター量と種子量の関係を明らかにするために, リター・シードトラップを用いたリター量と種子量の調査に加えて, 10m×10mのコドラートを設置し, リター量と種子量の詳細な分布状況を調査した. また, 調査地ではニホンジカの顕著な侵入は報告されていないが, 近年のニホンジカの生息場所拡大状況から, 自動撮影カメラによる野生動物相調査も行った. リター・シードトラップを用いたリター量と種子量の調査から, 調査地での隔年でのブナの豊凶が明らかとなり, 研究集会で発表した. コドラート内のリター量と種子量の詳細な分布状況を調査は, 7月と12月に行い, リター量と種子量の計測を行った. また, 自動撮影カメラによる野生動物相調査では, 調査地ではニホンジカは撮影されなかったが, 付近では撮影され, これを研究集会と雑誌で発表した. さらに, ニホンツキノワグマやイノシシによるリター・シードトラップヘの危害が観察された.
|