Outline of Annual Research Achievements |
【はじめに】 千葉県房総半島の房総丘陵には山地性針葉樹ヒメコマツが天然に隔離分布するが, 1970年以降に急激に個体数が減少し, 房総丘陵に位置する東京大学千葉演習林内では, 1970年代には天然個体が200本以上あったが, 現在では, 20本以下にまで減少している。房総丘陵のヒメコマツは奥山に小集団化し, 各集団の距離が数百m以上で離れ各々の集団が隔離され, 花粉流動が悪い。一方, 人工交配で強制他家受粉を行った場合, 種子の充実率が向上することが明らかになっており, いかにして他家受粉率を向上させるかが課題である。これまで申請者は, 約20年生ヒメコマツの高芽接ぎでは, 既に適用の可能性を示している。そこで本研究では, これまでに得られた知見を利用して異なるクローンを100年以上の高齢木に接ぎ木し, 早期に種子を得る高芽接ぎを現地で試みる。 【方法】 高芽接ぎは冬季におこなった。使用する台木は, 千葉演習林内に生残する天然性の高齢木の2個体とし, 30枝/家系(合計60本)で高芽接ぎする。通常の接ぎ木であれば何らかの処理の必要性があるが高芽接ぎにおいては無処理でも活着の可能性を示したことから接ぎ穂の処理はおこなわなかった。供試する穂木は, 2家系とし, 集植所にクローン保存してある約20年生木と100年生以上の高齢木の同家系から約半分ずつとした。接ぎ方は, 台木の樹冠外縁部の1年生枝に穂木を枝ごと割接ぎし, 接ぎ木テープで縛り固定した。活着調査を5月, 8月, 12月でおこない成否を判断した。 【結果と考察】 8月の段階では, 台木2本とも集植所個体の接ぎ穂で高い活着率を示した。しかし, 12月の調査ではほとんどが枯死し差が見られなかった。20年生のヒメコマツを用いた高芽接ぎでは, 活着の成否が概ね夏季で判断できるが, 高齢木台木を用いた場合では, 冬季まで判断がつかなかった。100年生の台木を用いた場合, 20年生の台木と違う処理をおこなわないと活着が困難でると言えよう。
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