近年、多くの研究により薬物代謝酵素の遺伝子多型が薬物の効果や副作用の個人差に影響することが明らかになってきた。しかし、CYP2C19は肝臓での発現量に大きな個人差が存在するため、遺伝子多型に基づく酵素活性の変化のみでは薬物の効果や副作用発現に関する個人差を十分に説明することはできないと考えられている。本研究では、末梢血単核球におけるCYP2C19のmRNAやタンパク量とCYP2C19基質内服時の未変化体/代謝物比の関係性を評価することで、肝臓内のCYP2C19の発現量を予測し、CYP2C19の遺伝子多型による酵素機能の変化のデータと合わせてより詳しくCYP2C19の酵素活性を予測することを目的とした。 まず、CYP2C19の遺伝子多型の解析方法と末梢血単核球のCYP2C19 mRNA量の測定方法を構築した。日本人ではCYP2C19*1、2、3、17が99%以上を占めるため、これらの多型を制限酵素断片長多型分析法で測定した。CYP2C19*2、3、17のSNPを含む領域をPCRで増幅し、それぞれ制限酵素であるSma I、BamH I、Mnl Iで処理した。切断の有無で遺伝子型を判定することができた。次にmRNAを定量するために採取した血液より分離した単核球からtotal RNAを抽出し、逆転写反応後にPCRを行うことで、CYP2C19 mRNAの発現を確認した。現在、臨床検体での測定を進めている。今後、末梢血単核球のCYP2C19タンパクの発現確認・定量と、オメプラゾール投与後の血漿中オメブラゾール、オメプラゾールスルフォンおよび5'-ヒドロキシオメプラゾールの液体クロマトグラフータンデム型質量分析計による測定を行う。その後、末梢血単核球におけるCYP2C19のmRNAやタンパク量とCYP2C19基質内服時の未変化体/代謝物比の関係性の評価を行う。
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