Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】 HDLはその組成・構造において不均一な粒子であり、個々のHDLが有する役割は様々である。アボリポ蛋白Eを含有するHDL(アポE-HDL)は他のHDLと比べ動脈硬化抑制作用が強いとされているが、その測定意義はこれまでわかっていない。本研究では、アポE-HDL測定法の基礎的検討と冠動脈疾患におけるアポE-HDL測定の臨床的意義に関する検討を行った。 【研究方法】 アポE-HDLコレステロール(HDLc)は、2種類のカラムを直列に連結したHPLC(タンデムHPLC)法で全血清から定量する方法を検討した。測定精度は従来法(ボリエチレングリコール沈殿法とリンタングステン酸沈殿法を組み合わせた方法)と比較して評価した。冠動脈CTで有意な狭窄(狭窄率50%以上)が認められ症例(n=17)と、狭窄を認めなかった対照群(n=35)を対象に、アポE-HDLcp、冠動脈カルシウムスコア、PCSK9、その他の血清脂質項目を測定し、アポE-HDLcの測定意義を検討した。 【研究の成果】 アポE-HDLc測定の同時再現性はCVが1.78%であった。従来法との比較でも良好な相関(y=0.43x+2.47, r=0.933, p<0.01)が確認できた。冠動脈CTを受診した2群の比較では、アポE-HDLcが対照群と比較して冠動脈疾患群で低値傾向を示したが、有意差は認められなかった(p=0.33)。アポE-HDLcはカルシウムスコア(r=0.04, p=0.78)やPCSK9(r=0.12, p=0.5)とは相関しなかったが、トリグリセリド(r=-0.534, p<0.01)やLDL粒子径(r=0.470, p<0.01)とは有意な相関が認められた。以上の結果から、アポE-HDLcの低値は動脈硬化促進性のリボ蛋白質プロファイルと関連している可能性が示唆された。
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