Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究は, シタラビンによる斑状丘疹性皮疹の発生機序の解明および予防方法の検討を行うことを目的とし, 培養細胞を用いた検討を行った. 【方法】ヒト表皮角化細胞(HaCaT)細胞を用い, シタラビンによる皮膚細胞に対する影響について, western blot法を用いて, 細胞障害, 炎症系シグナルやアポトーシスに関連した各種項目について検討を行った. シタラビンは医療用医薬品のキロサイド®を用いた. 【結果】以下の結果が得られた. 皮膚の恒常性に関わる因子とされるSignal Transducer and Activator of Transcription (STAT)3およびその下流因子, アポトーシス関連因子, 炎症性サイトカインとして, チロシン705リン酸化STAT3, Total STAT3, MCL1, survivin, リン酸化NF-kB, Total NF-kB, PARP, Cleaved PARP, Cleaved Caspase3のタンパク発現量変動について, 0.5, 1, 2.5, 5, 10mg/Lのシタラビン添加培地での培養後, western blot法で評価を行った. チロシン705リン酸化STAT3, MCL1, survivin, リン酸化NF-kB, Total NF-kB, およびPARPの全てにおいて濃度依存的な発現量減少が見られた. 一方, Cleaved PARP, Cleaved Caspase3については, 濃度依存的に発現量の増加が見られ, 1mg/L以上において顕著であった. 【考察】上記結果より, HaCaT細胞の各種因子に対するシタラビンの濃度依存的な影響が確認できた. また, 今年度の検討から, 各々異なる濃度域において, 各種因子に大きな影響を与えていることが示唆された. 特にアポトーシス関連因子には, より低濃度域からその影響が見られる事が分かり, PARPは実験条件を再検討した結果, 前年度より低濃度である0.5~1mg/Lから顕著に変動が起こる事が確認された. 今回の結果から, シタラビンによる皮膚細胞に対する影響として, アポトーシス関連因子による細胞死, 各種炎症系シグナルを介した細胞障害, STAT3抑制による細胞障害が濃度依存的に引き起こされており, これらが斑状丘疹性皮疹の発生機序に関与している可能性が初めて示唆された.
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