リステリア感染症はリステリア(Listeria monocytogenes)によって引き起こされる細菌感染症で、特に免疫力の低い小児や免疫不全患者で発症し、発熱や意識障害によって重症となる。 リステリア感染症に対しては、アンピシリン/ゲンタマイシンが第一選択とされ、実際に多くの症例でゲンタマイシンが用いられている。しかし、髄膜炎ではリステリアの多くが宿主マクロファージ内に寄生しており細胞膜を通過しないゲンタマイシンの有効性は疑問が残る。 本研究は、リステリア感染症に対するゲンタマイシンの効果を、作用機序も含め解析しようとするものである。 まず、in vitroの培養系におけるゲンタマイシンの効果について検討した。ゲンタマイシンについてはin vivoにおいてアンピシリンに対する補助的効果をもたらすことが報告されているが、in vitroにおいて、そのような効果があるかの報告は少ない。本研究では、単剤では効果のない濃度のアンピシリンに同じく単剤では効果のないゲンタマイシンを加えることにより、有意にリステリアの増殖が抑えられることが示された。このことから、まず、この相乗効果についてさらに詳細に解析を進めることとした。その結果、基本的に静菌作用しかも他ないアンピシリンがMICの1/2のゲンタマイシンを加えることにより殺菌作用を示すことも示された。 これまで、in vivoにおいて細胞障害作用などによる相乗効果が示唆されてきたが、本研究によって菌そのものに対してアンピシリン、ゲンタマイシン両薬剤が相乗的に効果を示すことが示された。今後は、その作用のメカニズムについて詳細な解析が待たれる。
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