【目的】 急速に高齢化が進行するわが国において、褥瘡対策は喫緊の問題である。当院では、褥瘡発生報告書に基づき月2回の褥瘡回診を行っているが、その際回診後2週間で改善している患者が多い反面、悪化傾向にある場合も散見された。そこで、2回目の褥瘡回診時に褥瘡が悪化した、または変化なしを悪化群とし、改善群との2群に分類し、悪化するに至った背景要因を調査することを目的とした。 【方法】 対象は2009年6月~2014年3月に千葉大学医学部附属病院に入院していた褥瘡保有患者で、評価期間中に14日間の間隔で2回、回診で評価した20歳以上の患者を対象とした。 患者背景として年齢、性別、身長、体重、日常生活自立度、褥瘡発生部位、各種検査値(TP、Alb、T-Cho、WBC、LY、TLC、CRP、RBC、HGなど)、併用薬剤、食事摂取状況など褥瘡改善に影響を与えると推察される項目を調査した。褥瘡状態評価は日本褥瘡学会作成のDESIGN-R評価表を用い、多発褥瘡を保有している患者の場合には、1症例のうち最もDESIGN-Rの合計点の高い褥瘡のみを解析に含めた。今回の調査は、初回回診から2回目回診までの約14日で褥瘡が悪化した、または変化なしを悪化群とし、改善群との2群に分類し、背景要因を調査した。 【結果】 対象患者は89名であり、改善群は51名、悪化群は38名であった。両群における単変量解析ではOHスケール点数、日常生活自立度、充足率、ステロイド剤の使用、鉄剤の使用がP>0.2の因子であった。それぞれの因子について多変量解析を行ったところ、充足率(P=0.011 95%信頼区間1.005-1.041)が独立因子として示唆された。つまり、褥瘡改善には患者の必要熱量を十分投与する必要があると考えられた。また、今回の調査を通じ基礎疾患などで内服している薬剤により、褥瘡が悪化したと考えられる患者が存在することが明らかとなった。このことから、患者に投与されている薬剤も褥瘡の改善に対し影響を及ぼしているのではないかと考えている。引き続き褥瘡が悪化するに至った背景因子を調査する予定である。
|