胃癌は本邦において死亡数が第2位と重要な位置を占める癌の一つである。本邦の胃癌治療におけるガイドラインでは一次治療としてテガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤(以下、S-1とする)+シスプラチン併用療法(以下、SP療法とする)が推奨されている。しかし、この臨床試験では1.5m2以上の体表面積(以下、BSA)患者においてS-1の投与量が一律120mg/dayとなっており、増量の目安と考えられる1.75m2以上のBSAにおいても増量がなされていないのが現状である。そのため、BSAが大きい患者ではS-1の血中濃度の低下から治療効果が減弱し無増悪生存期間(以下、PFSとする)や全生存期間(以下、OSとする)に影響を与えることが示唆されるが、これまでにこのような報告はない。そのため、今回我々は当院で切除不能進行再発胃癌に対してSP療法を受けた患者を対象とし、BSAがSP療法のPFSとOSに与える影響について検討を行った。検定方法は生存分析にはカプランマイアー法を、2群間の比較にはt検定とx2乗検定を用い、P<0.05を有意差有りとした。 結果は対象患者数としてBSA≧1.75m2群は18名、BSA<1.75m2群は135名であった。患者背景ではBSA≧1.75m2群において有意に男性が多く、年齢は若かった。臨床検査値ではリンパ球数とヘモグロビン値が高値であり、クレアチニンクリアランスは良好であった。その他の検査値については有意差を認めなかった。BSA≧1.75m2群とBSA<1.75m2群におけるSP療法のPFSの中央値は4.5ヶ月と6.5ヶ月(P=0.74)、OSは15.7ヶ月と14.7ヶ月(P=0.59)と両群間に有意差を認めなかった。 今回の結果から、BSAの違いがSP療法のPFS、OSに与える影響は小さいことが示唆された。しかし、PFSの中央値はBSA≧1.75m2群で約2ヶ月短いという結果が得られており、年齢や検査値などのバイアスを考慮した上でより多い症例数を用いて解析を行えば、有意な違いが見いだされる可能性がある。一方、OSに関しては二次治療以降の影響もあるため、有意な違いは生じないものと考えられた。
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