【研究目的】 注射薬による配合変化が原因と考えられるルート閉塞事例を調査し、実際に配合変化を起こす頻度の高い医薬品の組み合わせを把握し、配合変化を回避する対策を検討することを目的とする。 【研究方法】 国立大学附属病院の医療安全部門に所属する専任リスクマネジャーに対し、2013年4月から2016年2月の期間に起きたルート閉塞事例のうち配合変化によると判断できる事例を調査した。調査は2016年3月にアンケート調査票をメールで配信し、調査に同意を得られた施設から回答をもらい、集計した。集計した結果から、配合変化の多い組み合わせ薬剤(ただし、麻薬および向精神薬を除く)を用いて再現可能か検証を行った。 【研究成果】 3月中に得られた調査結果は、14施設から32事例の報告があり、ルート閉塞事例を起こす薬剤の組み合わせで多かったのが、栄養用輸液のビーフリード輸液とカルシウム製剤の組み合わせで21.9%(7件)だった。次いで、ビーフリード輸液と催眠鎮静剤のミダゾラム注12.5%(4件)、栄養用輸液と抗てんかん薬のフェニトイン注9.4%(3件)であった。その他は、少数であったが、酸性薬剤や塩基性薬剤で配合変化に注意を要することが明らかな薬剤が多かった。ビーフリード輸液とフェニトイン注は、側管からの投与で直後から白濁し、5分で閉塞となった。また、ビーフリード輸液とカルシウム製剤は、製薬会社作成の配合変化表では、ビーフリード輸液500mLに対してカルチコール8.5%20mL2Aまでは24時間変化がないとされていたが、実際にはカルチコール10mL1Aでも白濁し24時間以内にルート閉塞となり、再現性もあった。資料による条件とは異なり白濁してくることが確認された。要因の一つとして、混合時に十分に混和していないことが予測され、実際に混和しない場合は、5分後に白濁し20時間後にルート閉塞した結果が得られた。 また、調査で得られた事例の75%は、各薬剤の添付文書やインタビューフォーム、製薬会社作成の配合変化表にて、事前に情報を把握していれば回避可能であったと判断できるものであった。このことより、配合変化が考えられる薬剤の情報を適切に情報提供することで、閉塞事例の減少が期待できることが示唆された。
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