【研究目的】近年、国際共同治験の推進等により、限られた日本人でのデータで承認される抗癌剤が増えている。しかし、抗癌剤の副作用発現に与える要因として、人種差も考えられている。本研究では、外国人に比べて日本人で多い副作用や抗癌剤の種類、その要因について明らかにすることを目的とする。そこで、抗癌剤の治験における日本人と外国人での副作用の発現頻度に関する情報を詳細に解析し、その傾向について検討した。 【研究方法】過去5年間に本邦において承認された抗癌剤を対象に、審査報告書および申請資料概要から治験における日本人集団と外国人集団での血液障害(好中球減少、発熱性好中球減少症、血小板減少、貧血)および肝障害(肝胆道系障害、AST上昇、ALT上昇)の発現頻度について調査した。また、日本人集団と外国人集団で10%以上又は3倍以上発現頻度に差がある薬剤を集計した。 【研究成果】21薬剤が解析対象となった。血液障害全般の頻度は、日本人で有意に高かった。好中球減少および血小板減少の頻度は日本人で有意に高く、10%以上又は3倍以上高い薬剤はそれぞれ10剤と6剤(Grade3以上では8剤と2剤)あった。一方、外国人において10%以上又は3倍以上発現頻度が高い薬剤はそれぞれ1剤と0剤であった。発熱性好中球減少症および貧血の頻度は、日本人と外国人で有意な差はなかった。日本人では血液障害、特に好中球減少および血小板減少の発現頻度が外国人に比べて高い傾向がみられた。肝障害(肝胆道系障害、AST上昇、ALT上昇)においては、いずれの頻度も日本人で有意に高かった。今後これらの要因について明らかにしていく必要があると考えられた。
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