【目的】近年、大腸がん化学療法においてカペシタビン(ゼローダ®)を含むXELOX療法が汎用されている。一方、副作用として手足症候群(以下、HFS)を誘発し、患者のQOLを低下させる。HFSが認められた場合、減量・休薬されることがあり、HFSをコントロールしてQOLを維持しながら治療を継続していく上ではHFSの治療は極めて重要である。しかし、カペシタビンによるHFS発症機序は不明であり、病態解明や治療薬探索・開発を行う上で重要なモデル動物に関する報告もない。我々はこれまでに本助成により、ラットに1日1回28日間ゼローダ®錠を反復経口投与した結果、HFSは発現しないことが示唆された。そこで今回、カペシタビンの代謝物である5'-DFURを利用した手足症候群のモデル動物の作製について検討した。 【方法】実験にはWistar系雄性ラット(6週齢)を用い、5'-DFUR(フルツロン®カプセル、400、1000、2000mg/kg)を1日1回28日間経口投与した。その後、1週間毎に体重および水分率の測定、熱刺激鎮痛効果測定試験(プランターテスト)および圧痛覚過敏試験(Von Frey試験)を行った。 【結果】体重は、1000mg/kg群および2000mg/kg群で投与初期から減少し、それぞれ投与11日目および6日目に全てのラットが死亡した。一方、400mg/kg群では体重減少等は認めらなかった。そのため、以下は対照群と400mg/kg群で比較検討を行った結果を示す。水分率は、投与1週間後より対照群と比較して有意な低下が認められた。また、圧痛覚過敏試験(Von Frey試験)においては、投与2週間後より対照群と比較して有意な反応闘値(g)の低下が認められた。熱刺激鎮痛効果測定試験(プランターテスト)においては、投与4週間後に対照群と比較して有意な反応時間(sec)の短縮が認められた。 【考察】ラットに1日1回28日間5'-DFUR(フルツロン®カプセル)を反復経口投与した結果、HFS様症状(疼痛、痛覚過敏、皮膚の乾燥)が認められた。以上の結果より、カペシタビンの代謝物である5'-DFURを投与することにより、カペシタビンが誘発するHFSのモデル動物になり得る可能性が示唆された。
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