【目的】リバーロキサバンなどの非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬は、ワルファリンとは異なり、用量調節のための血液凝固能検査が不要で、食事や他剤との相互作用も少ないといった大きな利点を有する薬剤であるが、これらの薬剤の服用によって脳出血などの重篤な出血性副作用が発現されるため、適正使用の推進が強く求められている。一方、リバーロキサバンの添付文書において、慎重投与や禁忌の減量基準に、腎機能の指標であるクレアチニンクリアランス(Ccr)値が用いられているが、出血性副作用を回避するための対策は十分に確立されていない。そこで本研究では、リバーロキサバンによる出血性副作用の発現における腎機能の関連性を明らかにすることを目的とした。 【方法】九州大学病院において使用頻度の高いリバーロキサバンに対象薬剤を絞り、リバーロキサバンが投与された非弁膜症性心房細動患者106名を対象として、患者背景、リバーロキサバンの使用状況(投与量、投与期間など)、併用薬剤および出血性副作用の発現状況を電子カルテより抽出して解析を行った。さらに、出血性副作用発現群と非発現群に分けて、Ccr値を比較した。 【成果】慎重投与の対象であるCcr 49mL/min以下の腎障害のある患者においては、添付文書の減量基準に従いリバーロキサバンが減量されていた。さらに、禁忌の対象であるCcr 15mL/min未満の腎不全の患者では、リバーロキサバンは投与されておらず、薬剤が適正に使用されていることが確認された。また、リバーロキサバンによる出血性副作用の発現率は8.5%であり、出血性副作用発現群と非発現群におけるCcr値に有意な差は認められなかった。本研究の結果から、リバーロキサバンによる出血性副作用が腎機能低下以外の要因によっても発現される可能性が示唆された。
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