Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 血管新生や血管形成に関与する増殖因子には、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-EおよびPIGF-1、PIGF-2の7種類が知られ、VEGFファミリーと呼ばれている。この中で、VEGF-Aは糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などにおいて眼内血管新生を促し病態を悪化させる重要な因子であることが明らかとなり、VEGF-Aを標的とする阻害剤がすでに良好な治療結果をもたらしている。近年開発されたVEGF阻害薬はその標的分子も多様化し、VEGF-AのみならずPIGFを含む複数のVEGFファミリーを阻害する薬剤である。PIGFは血管新生や炎症などに関与する事が報告されているが、その生理的作用は未だ明らかになっていない。本研究では、網膜の恒常性維持に重要な働きをする網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelium, RPE)におけるPIGFの役割を解析した。 研究方法 培養ヒトRPE細胞にPIGF shRNAを導入して遺伝子発現を抑制し、non target shRNAを導入したコントロールと比較をおこなった。 研究結果 PIGF発現を抑制したヒトRPE株では、VEGF受容体(VEGFR)2のタンパク発現が低下していること、VEGFR2下流シグナルである細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase, ERK)1/2やv-akt murine thymoma viral oncogene homolog(AKT)のリン酸化が抑制されることが明らかになった。VEGFR2のmRNA発現に変化は見られなかったことから、PIGFはVEGFR2タンパクの安定性に関与している可能性が示された。
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