Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 : 最近、炎症性疾患に関わるサイトカインIL-21をノックアウトしたマウスでは、高脂肪食を与えても肥満にならないことが報告された(Diabetes 63, 2086, 2014)。この結果は、IL-21が脂肪の分解を抑制することにより、糖尿病や動脈硬化などメタボリックシンドローム発症に強く関与している可能性を示唆している。私たちが研究を進めているIL-21アイソフォーム(IL-21iso : IL-21と同様の機能を有する)をT細胞特異的に発現させたマウス(IL-21isoTgマウス)は、野生型マウスに比べて、内臓脂肪の割合が高く、上記の報告を裏付ける結果ではないかと考えた。本研究では、このIL-21isoTgマウスを用いて、IL-21が脂肪分解を抑制している可能性をさらに詳しく確かめることを目的とした。研究方法・成果 : はじめにIL-21isoTgマウスと同腹の野生型マウスにおいて、4週齢から40週齢までの内臓脂肪(生殖器周囲脂肪)の重量を比較したところ、有意にIL-21isoTgマウスの方が雌雄共に増加していることを確認した。次に、5週齢より、高脂肪食を与え、体重増加を比較した。予想に反し、高脂肪食の摂取量は変わらないのに、IL-21isoTgマウスは、野生型マウスより体重増加の割合が低く、最終的には、野生型マウスより内臓脂肪の増加が大きく減少していた。組織像の解析により、IL-21isoTgマウスでは、脂肪細胞の肥大化の抑制も確認された。マイクロCTで脂肪組織の体積を測定した結果は、解剖所見と同様であった。空腹時血糖値は、普通食でも高脂肪食でもIL-21isoTgマウスの方が低めで、高脂肪食摂食後の糖負荷試験でも、IL-21isoTgマウスの方が血糖値の上昇が低く、インシュリン感受性が保たれていることが示唆された。以上のことより、IL-21isoTgマウスでは、普通食下では、IL-21isoが脂肪分解抑制的に働くが、高脂肪食下では、脂肪分解促進に働き、エネルギー消費が増加している可能性が示唆された。IL-21isoはIL-21と異なり細胞外に分泌されにくく、細胞膜結合型として存在することが、この相反する作用をもたらしている可能性があり、今後解析して行きたい。
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