Outline of Annual Research Achievements |
癌患者の終末期医療においてQOLに最も影響を与える症状は「疼痛」である。本研究では、癌性疼痛の分子メカニズムを明らかにし、新規の疼痛治療薬を開発することを目的とし、動物モデルを用いた解析を行った。 <癌性疼痛モデル動物(ラット)の作成と疼痛行動の評価> Wistar系雄性ラット(200-220g)の左下肢脛骨にラット乳癌細胞(MRMT-1)1x10^4個を播種し、癌骨転移性疼痛モデルを作成した。疼痛行動は手術前日(DAYO)から隔日で3週間観察を行った。疼痛行動評価は、von-Frey test(機械的刺激による痛覚過敏の評価)とHind limb weight-bearing test(体重移動による疼痛評価)によって評価した。Hind limb weight-bearing testはDr. Yangらが開発した全自動測定機を用いた(Kim HT. etal., 2015, Physiology&Behavior)。von-Frey test による疼痛行動はDAY5からDAY12まで観察されたが、DAY14以降疼痛行動の回復(抑制)がみられた。一方、Hind limb weight-bearing testで評価を行った際にはDAY14以降も疼痛閾値の低下が保たれたままであった。これらの結果より、癌細胞を播種した骨転移性癌性疼痛モデルはipsi latelalでは痛覚過敏を起こすものの、経時的に運動機能が障害されるため、疼痛行動を示さなくなる(偽陰性を導く)ことが示唆された。従って、本疼痛モデルの疼痛行動評価にはHind limb weight-bearing testが有用であることが同時に示された。 <BDNFを標的とした遺伝子治療法(デコイ療法)の癌性疼痛に対する有用性検討> 人工的に作成したBDNF mRNA に対するデコイ核酸(Tsukuba Oligo Service)の鎮痛効果を確かめるため、デコイ核酸を作成した。鋳型DNA(Obata N. etal., 2011, BBRC)をPCR反応で増幅し、二重鎖DNAを作成しで生理食塩液で42μg/14μLに希釈し、デコイ試薬とした。本検討では、デコイ試薬の投与には至らなかったが、カテーテルの留置を行い、投与できるまでにモデルを成熟させた。 今後はデコイ試薬の有用性について検討を行っていく。
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