研究目的 細胞診標本での免疫染色は、一度スライドガラスより細胞を剥がして他のガラスに張り直し、免疫染色を行う方法や何枚か免疫染色用に標本を作製し行うのが通常である。しかし、そのような方法では、目的となる細胞が剥離し無くなる可能性もある。また、標本上で免疫染色を行った場合、免疫染色で染色された細胞以外の細胞の判定に苦慮することや、背景への色素沈着により鮮明に見えない場合がある。 そこで重要な細胞を失わないために液状検体の細胞を液中(浮遊した状態)にて免疫染色し、さらに陽性以外の細胞の種類の判定も解りやすくなるように、Pap染色と免疫染色の二重染色法の確立を目的とした。 研究方法 細胞診検査のため穿刺吸引された腹水で、腺癌(adenocarcinoma)と診断された残検体を、LBC保存液にて保存し、保存した検体をいくつか混ぜ合わせ、従来行っている細胞診標本用免疫染色法の要領で、抗CEA抗体や抗Calretinin抗体を用い液中にて免疫染色を行い、その後LBC法(Sure Path法)で標本を作製し、Pap染色後評価した。また、迅速診断で行うことも踏まえ免疫染色工程の短縮や洗浄回数の削減等の検討も行った。 研究結果 従来行っている免疫染色法での二重染色は、免疫染色での反応色(DAB)は濃く染色されていたがPap染色との染め分けは出来ていた。しかし、今回の標本では癌集塊が多いためか標本に厚さがあり見にくいように思われた。迅速診断に対応するための免疫染色工程の検討では、条件によっては目的の細胞が染色されないものや、染色はされるが洗浄回数が少ないためかバックグランドに汚れがあり判定困難なものがあった。 まとめ 液状検体の細胞を液中で免疫染色を行い、その後Pap染色を行うことは可能であった。免疫染色の工程についての設定は、通常行う場合や迅速で行う場合も、さらに検討が必要と考える。
|