【研究目的】 本研究ではCystatinC(CysC)の大脳白質病変または認知機能への遺伝的要因を明らかにすることを目的とし、脳ドックを受診した患者のDNAサンプルを用いて、CysCの遺伝子多型について解析し、遺伝子多型と大脳白質病変、認知機能との関連性について検討した。 【研究方法・結果】 脳ドックを受診した患者1873例を対照とし、末梢血よりDNAを抽出した。CysC遺伝子は大脳白質病変、認知機能に関連すると考えられるrs5030707、rs1130655、rs73318135、rs1055084、rs1064039、rs201089355の遺伝子多型を対象とし、Taqman法で解析を行った。大脳白質病変は脳室周囲病変(PVH)、深部皮質下白質病変(DSWMH)について、認知機能は岡部式簡易知的評価尺度、Frontal Assessment Battery (FAB)、Kohs立方体検査についてそれぞれ遺伝子多型との関連について解析を行った。その結果、大脳白質病変に関してrs1064039とPVHとの間において有意な差が認められた(p=0.048)。しかし、他の遺伝子については認められなかった。また認知機能に関しては全ての項目と遺伝子多型との間に有意な差は認められなかった。 【研究成果】 CysC遺伝子多型rs1064039とPVHとの関連性が示唆された。現在までにrs1064039は滲出型加齢黄斑変性症やアルツハイマー病(AD)といった疾患との関連や、ハプロタイプがDSWMHと関連するという報告はあるがPVHとの関連を示す報告はない。rs1064039は血漿中のCysC濃度とも関連する遺伝子多型との報告もあり、今後は血漿CysC濃度と遺伝子多型との関連を明らかにするとともに、ADの原因遺伝子として知られるApoEとの相互作用についての調査も必要である。
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