Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】幼少期に身につけたい習慣として, 意欲的に噛んで味わう「食べる力」がある。食の体験活動が「食べる力」へどのように影響するかについては十分には分かっていない。本研究は, 幼稚園で取り組んでいる食の体験活動が「食べる力」へ与える影響を分析したものである。 【研究方法】1. 噛む力を定量的に把握するため噛合力測定ガムを用いて瞬時の噛む力を測定した。2. 年間15種類の野菜栽培と8種類の自然物を採取し, 食べる体験や食材と触れ合う体験を日常の保育で行った。体験による味覚と行動の変容を観察するため, 園児の態度や反応をデジタルカメラで撮影した。また, 教師による言葉かけの記録観察と保護者のアンケート調査をもとに分析をした。 【研究成果】1. 噛合力測定ガムは, カラースケール判断値で平均4の判断値が得られた。この測定からは概ねよく噛むことができていると判断できた。2. 味覚についは, 保護者アンケートから日常的に自然物を採って味わう活動により大きな変容が生じていることがわかった。一般に酸味や苦みは幼児には好まれないが, アンケート結果から, 酸味は58%の園児が好んで食しており, 苦みは20%が好むことがわかった。また, 苦みを好んで食べる園児は, 固い物でも進んで食べようとする意欲がみられた。食べることに抵抗感を示す子は, 友だちから積極的に食べることへの誘いが食材に馴染むきっかけとなっていた。その結果, 食べられる食材数が増えた園児が85%となり, 食べることに積極的にかかわろうとする姿がみられた。これは, 教師の共感的な声かけも影響があり, 園で食べた経験のある食材が増えることで食の幅が広がったのではないかと考える。このことから, 子どもの遊び場に自然に近い状態の食材を準備し, 子ども同士の関わりの中で体験を深めることが必要であり, それらが食べる意欲を高め, 味覚の広がりなどの発達にも影響を与えていることが明らかとなった。
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