Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
平成27年度はP. gingivalisが産生する硫化性揮発物がもつ還元作用を中心に、以下の項目について検討を行った。1. 硫化水素非産生株を用いて、その影響を解析した。その結果、硫化水素非産生株は野生株に比べ、過酸化水素に対する抵抗性が減少することが明らかとなった。また、その際に、野生株は硫化水素非産生株に比べ、培養上清中の還元性の増加が示唆された。硫化水素を含むP. gingivalisが産生する硫化性揮発物や、副産物であるケト酸などの代謝物質は、菌体外に放出され、還元作用を示すことで歯周ポケット内や細胞内侵入後における過酸化水素抵抗性に関与していることが考えられ、これらにより生体内における生存戦略や歯周病に影響を与えている可能性がある。2. 1のメカニズムについて、硫化水素による抗菌剤抵抗性に関与している可能性についても検討を行った。しかし、野生株と硫化水素非産生株との間に抗菌剤に対する抵抗性の違いを確認できなかった。これについては、嫌気状態で培養される細菌においては、抗菌剤が及ぼす酸化作用は抗菌剤の持つ殺菌作用について影響を及ばさない可能性がある。3. 硫化性揮発物やケト酸は酸素存在下において経時的に酸化されるため、定量について、スタンダードとなる試薬を含め、様々な工夫が必要になる。また、硫化性揮発物の定量方法の多くについて特異性が問題となる。いくつかの既存の定量方法について確認したところ、基質の量や硫化性揮発物・ケト酸の定量において有効であることが示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。