Research Project
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本年度はゾラの初めての小説『クロードの告白』(1865)を以下の三つの観点から分析した。二つの文学潮流、ロマン主義とレアリスムの間に生まれたこの小説は、1862年の時点では、あくまでロマン主義の文脈内における理想と現実の対立という中心主題を持っていた。執筆が中断していた1864年に作家は、実証主義者の著作を学び紹介することで、科学的手法に裏打ちされた自らの文学、絵画理論を温める。1865年の加筆箇所を推定し、その生成過程を分析することでゾラのロマン主義脱却と自然主義理論構築の過程が見えてくる。『クロード』第21章の春のパリ郊外への散歩の場面は、同様の場面を描いたゴンクール兄弟の『ジェルミニー・ラセルトゥー』(1865)第12章との類似が複数の研究者によって指摘されている。無数の地理的類似点にもかかわらず、『ジェルミニー』読書がゾラに「病んだ郊外」という着想を与えたという素朴な仮説は退けられる。モンルージュの荒廃した風景描写は時評文「老いた馬」の中でゾラが既に行っていた描写からの自己流用である。荒野モンルージュをゾラが郊外発見の場所として選択したことついては、地理的観点から二つの仮説が立てられる。第一に、人骨の詰まった旧地下採石場を美しい大通りの下に隠すオスマン大改造の偽善性への批判であり、第二に、その地で城壁建設に参加した作家の父、技師フランソワ・ゾラへのオマージュである。下水のように汚いビエーヴル川を遡り、緑の谷間にたどり着くことでクロードは恋人ローランスの更生を果たすが、それは束の間の幻想であった。川辺に広がる汚い「堆肥」から目を逸らしたクロードは、逆説的に郊外の堆肥の持つ「腐敗と豊穣さ」の両義性を掘り下げるルーゴン=マッカール叢書を準備していたのだ。これらの問題について日本フランス語フランス文学会で口頭発表および論文投稿を行った。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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フランス語フランス文学研究
Volume: 113
Gallia
Volume: 56 Pages: 51-60
120006482960
Volume: 55 Pages: 65-74
関西フランス語フランス文学
Volume: 22
130007431722
待兼山論叢 文学篇
Volume: 49 Pages: 111-128
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