Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本研究は、ここ数年各地で見られるようになった「民俗文化」を活用したまちづくりと、それに伴う住民アイデンティティの再構築という現象について、「現代社会における民俗の実践」という視点から、地域を取り巻く政治的・経済的・社会的状況の変化に注目しつつ、民俗がいかに位置づけなおされ、新たな意味を獲得しているのかを、中山間地域および被差別部落の事例を中心に調査検討することで、新たな民俗理解の可能性を考えようとするものである。本年度は最終年度ということで、引き続き大阪府和泉市旧南王子村および徳島県旧東祖谷山村・旧西祖谷山村(現三好市)の資料整理とともに、昨年から調査を開始した青森県三戸郡新郷村のキリスト祭り、これまで台風等による自然災害の影響のため実施できなかった宮崎県東臼杵郡椎葉村の平家祭り、また比較のため近年農漁家レストランで成功している南三陸町他においても調査を行なった。この3年間、上記のような視点からの資料を調査収集し、分析してきたわけであるが、特に注目されるのが、ここで活用されている「民俗」が、新たな生活基盤や住民アイデンティティの再構築といった大きな社会変化に伴う動きの中で、過去ではなく、地域社会の今日的なイメージや状況に合わせるかたちで再構成されたものであった点である。つまり、変化と現在を視野に入れたうえで民俗を理解する必要がある。また、その活用の方法についても、各調査地によってきわめて多様な面もあり、今回取り上げた現象を、現代という一時代だけに押し込めるのではなく、地域社会の変化全体の中に位置づけたうえで、その意義というものを政治的・経済的・社会的状況の変化に注目しつつ再検討する必要もあろう。このほか、地域社会をめぐる変化は、町村合併等の影響をはじめとして、今日においても進行しつつあり、今後も継続的に調査していく必要があることも指摘しておきたい。
All 2007 2006 2005
All Journal Article (3 results)
ふるさと資源化と民俗学(岩本通弥編)(発行 : 吉川弘文館)
国立歴史民俗博物館研究報告 第132集
Pages: 243-269
東北学院大学博物館学芸員課程報 27
Pages: 1-2