スポーツチーム/スポーツイベントへの地域住民による対応をめぐる社会学的研究
Project/Area Number |
16700472
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Sports science
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
橋本 政晴 信州大学, 教育学部, 講師 (90350181)
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Project Period (FY) |
2004 – 2005
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2005)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2005: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2004: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | プロスポーツチーム / スポーツイベント / メディアスポーツ / 地域生活の存続 / 生活の倫理 / 地域生活 / 生活の論理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1991年から鹿島アントラーズのホームタウンとなり、2002年のW杯開催の受け皿となった茨城県鹿嶋市を事例として、これらプロスポーツチームやスポーツイベントに対して地域住民たちは、どのような「働きかけ」をおこなったのかを明らかにすることである。さらには、その働きかけを駆動させた背後には、どのような「生活の倫理」が内在しているのかについても明らかにするため、サポーター活動に奔走し、その後市議会議員をつとめている地元出身のT氏と、彼をとりまく同市佐田地区の地域住民たちを対象とした。 プロスポーツチームやスポーツイベントに対するT氏とその地域社会の対応の諸相から、次のことが明らかになった。第一に、住民たちにとってサッカーは、決してい身近なスポーツではなく、言説によって凝り固められたメディアスポーツであり、メディアイベントであった。T氏はそうした住民よりも近くでサッカーを経験してはいるが、「熱い」サッカーを諦観する住民たちの暮らしぶりにも寄り添っている。ここから、メディアスポーツ/メディアイベントにおける受け手の能動性/受動性について語ろうとすることは、彼らの経験をあまりにも単純化・抽象化してしまうことにならないだろうか。第二に、住民たちがサッカーに対して諦観の姿勢を固持していたのは、自らの暮しをつつがなく送っていきたいがためのものだった。加えて、そうした地域の生活に配慮しつつ、「もの静か」な暮らしぶりに近づこうとするT氏の姿は、他方のサポーターとしての「過激な」振る舞いとは対照的であった。サポーターの代表としてのT氏は、地域の生活者でもある。両者が繋がりがないままに癒合している彼の身体性。それは、「地域」の歴史的な暮らしぶりが、かろうじてつなぎとめているのかもしれない。第三に、T氏はスタジアムに足を踏み入れると過激になり、ゴール裏を纏め上げることが求められる。鹿島に興味を注ぐマスコミや研究者に対しても、「地元サポーターの代表」としての役割が期待される。ところが共に地域生活を営んでいく人物としてのT氏に求められているのは、「つつがなく暮らしていく」ために地域に貢献することだった。だからこそスタジアムでは「ガラ悪く」しているのだが、地域生活者としての彼は、自身のこれまでの活動に苦悩し、「地域」に対して控え目に振る舞うのである。それだけ彼にとって「地域」の共同生活とは揺るぎのないものなのだ。鹿島においては地域生活とは無関係なままにサッカーが展開してきた。しかしそこで生活するT氏は「地域」とかかわらざるを得ない。スポーツ社会学の問いは、こうした生活の事実から出発することが求められている。
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Report
(2 results)
Research Products
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