Budget Amount *help |
¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
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Research Abstract |
沿岸生態系の物質フローにおける底生植物起源有機物の重要性を明らかにするため,伊豆半島沿岸に沈積する海藻片の種組成と現存量を調べるとともに,安定同位体比分析手法を用いて沈積海藻片から海底動物群集への有機炭素供給の可能性について検討した. 2004年12月に下田沿岸の水深20〜300mの海域でドレッジを曳網したところ,前年度の夏季の調査同様,多量の海藻片が入網した.特に100m深には多く沈積しており,360.1mg/m^2の海藻片が採集された.下田沿岸域では,夏季だけでなく冬季にも海藻が多量に沈積していることが示唆された. 下田沿岸域の堆積物中有機物のδ^<13>Cは,水深が深くなるにつれて低下していった.200〜300m深のδ^<13>Cは-24.6〜-19.3‰の範囲に分布しており,植物プランクトン起源有機物の指標である懸濁態有機物のδ^<13>C分布(-25〜-20‰)とほぼ一致していたことから,深い水深帯の堆積物中有機物は,植物プランクトン起源有機物の沈降粒子由来であるものと推察された。これに対して,5〜20m深の堆積物は-19.2〜-17.3‰の高い値を示しており,海岸海藻のδ^<13>C分布(主に-17〜-12‰)に近かった.浅い水深帯では,海藻起源有機物が降り積もり,堆積物中有機物のδ^<13>C値を上昇させていたものと推察された.また,100m深の堆積物は中間的なδ^<13>C分布(-19.6〜18.6‰)を示しており,多量の沈積海藻片が^<13>Cに富む有機物をもたらした可能性が示唆された.マクロベントスのδ^<13>C値が水深とともに低下していった前年度の結果は,栄養源である堆積物中有機物の水深変化を反映したものであると推察された. 本海域における堆積物中の有機炭素量と全窒素量は,それぞれ0.61〜2.98mg/gと0.05〜0.44mg/gの値を示しており,富栄養化海域に比べて低い水準にあった.下田沿岸域では,表層堆積物に含まれる有機物の含有量が少ないため,ベントスは常に餌資源不足の状態にあり,難分解性の海藻起源有機物も重要な餌資源になっている可能性が考えられる.
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