Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 年長5歳児, 1年生6歳児の実態をもとに, それぞれの発達段階における話す能力・聞く能力のねらいを具体化し, そのねらいに基づいた第1学年の「話すこと・聞くこと」に関するカリキュラムの開発を行うことであった。 研究の方法としては, 年長5歳児(10月中旬)の遊びや生活における発話, および1年生6歳児(10月中旬)の遊びや学習における発話を記録した。その際, 話し方・聞き方に関する事項(声の大きさ・速さ, 順序, 理由, 言葉遣い)と感情の種類(嬉しい, 怒り, 悲しい等の有無)の相関を整理した。その結果, 怒りや悲しさ, 喜びといった感情の起伏が生じるときに非言語性のコミュニケーションの表出頻度が高く, 5歳児においてはそれが顕著であった。そこで, 第1学年において, 単元「こだわりのおみせやさんをひらこう」という単元を開発した。本単元では, ①非言語性コミュニケーションから言語性コミュニケーションへの移行を促すことと, ②非言語性コミュニケーションを効果的に表出させることという二つのねらいをもって, 環境構成を含めた支援を考案した。 ①の手立てとして, イメージするお店のこだわりを「○○なお店」と言葉に表し, 自分たちの作る商品がその「○○なお店」に合っているかどうかを確かめながら商品作りを進めさせた。その結果, 自分の作る商品のイメージを言語化して語る姿が9割以上の子どもに見られた。また, ②の手立てとして, グループの話し合いにおいて葛藤が生まれ感情の起伏が生じやすくなるタイミングで, 自分の思いが相手に伝わりやすくなる声の大きさや強さ, 体の姿勢, 表情などの非言語性コミュニケーションの表出のさせ方を支援した。その結果, 非言語性コミュニケーションについても自分の思いを伝えるためにより適した表出のさせ方をする子どもが約2割増加した。
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