Outline of Annual Research Achievements |
算数科の表現力は, 算数科学習指導要領改訂の基本方針の1つにあげられるように, 算数教育において枢要となる資質・能力といえる。一方, 表現と言語活動を等質とする捉えが散見されたり, 授業において学習形態や指導方法に重きが置かれたり, といった状況から, 算数科の表現に対する本質的な議論が十分深まってないように映る。さらに, 表現は, 思考とセットで一体的に算数の文脈の中で, 教材とも関連付けて, 連動的に捉えることが求められる。このため, 表現は, 思考とともに涵養し, あわせて教材のあり様について検討を重ねる必要がある。本研究においては, 現実的表現, 操作的表現, 図的表現, 言語的表現, 記号的表現の5つの表現様式のうち, 教材との結びつきが強いが, その扱いが薄弱とされる「操作的表現」を通した児童の理解, 意欲と算数科における「操作的証明」が生まれる教材を検討した。例えば, おはじきを用いた九去法をもとにした実践を行った。まず, 「(百, 十, 一の)位取り表に2個のおはじきを置きます。どんな置き方がありますか。全て見つけてください。それが表す数も表し, その数を9で割ってください。」と発問することで, 児童は様々な置き方をし, これとともに, 数を表し, 9で割る計算も行う。この他, 児童がおはじき4個, 5個, 6個にし, 自ら活動を広げていき, 「3桁の数の場合, 各位の数字を足してそれが9で割れれば, もとの数も9で割れる。」とまとめた後, この過程でおはじきと9で割った剰余が同じになる理由を, おはじきや図を用いて「操作的証明」を行った。この他, 「数の葡萄」(数の石垣の形や向きを変えたもの)や「表」と図, 式の関連から図の操作から証明を行う教材などを考えた。また, 調査の結果, 児童の多くは「操作的表現」に理解を伴った高い好意性を示すが, 児童の中には, 「操作的証明」に困難性がみられた。一方, 教材にみられる「規則性」には高い関心を示した。
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