Outline of Annual Research Achievements |
ズツキダニ類とは哺乳類の体表に終生寄生するダニ類で, 獣医学分野では衛生害虫として注目されている. しかし, 日本に生息するズツキダニ類について, 基礎的な研究がなされておらず, 種同定すら困難な状況であった. そこで今回, 日本のズツキダニ類の種数と分類学的位置を明らかにし, 形態分類による検索表作成や新たなズツキダニ類の採取調査, さらに学会発表や論文投稿, 展示などを通して一般に周知することを目的として1年間研究を行なった. 本研究により, これまでズツキダニ上科とされていた分類群が, 現在ではヒゼンダニ上科に含まれ, 日本にはMyocoptidae, Listrophoridae, Chirodiscidae, Atopomelidaeの4科に属する9属11種が記録されていることが確認できた. このことについては, 平成28年の日本ダニ学会大会にて発表し, 詳細を平成29年3月に日本ダニ学会誌に投稿した(平成29年5月時点で査読後, 修正中). また, 既知種11種の他に, 3種を新たに発見していたが, 文献調査を行なった限りでは2種が新種, 1種が新産地記録種であると考えている. しかし, 本年度内の調査ではこれらの確証を得る情報を十分に得られなかったため, 次年度以降も文献調査及び標本調査を行ない, 慎重に検討することとした. これと並行して文献記録を基に形態分類による検索表も作成したが, 同定に足りる情報が不足だと判断し, 公表は控えた. 哺乳類におけるズツキダニ類の調査は, シントウトガリネズミ(4), アズミトガリネズミ(1), カワネズミ(2), ヒメヒミズ(4), ヒミズ(1), アズマモグラ(2), コウベモグラ(14), アムールハリネズミ(5), ノレンコウモリ(1), モモジロコウモリ(4), コテングコウモリ(2), クビワコウモリ(5), ニホンウサギコウモリ(5), ヒメホオヒゲコウモリ(2), アカネズミ(14), ヒメネズミ(18), ヤチネズミ(3), エゾヤチネズミ(1), タヌキ(1), ニホンジカ(1), イノシシ(1)である. カッコ内は頭数を示す. 目標を十分に上回る頭数を調査し, コウベモグラから多数のズツキダニ類を採取できた.
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