【研究目的】 服薬アドヒアランスの維持は、薬物治療を行う上で重要な課題である。内服用ルゴール液は放射性ヨウ素を用いた画像診断時の甲状腺保護などに汎用されるヨウ素製剤である。液剤であるため剤形的には幅広い層の患者に使用できる一方、苦味や刺激臭が強く服用困難を訴える患者も多く存在する。そこで、本研究ではルゴール液をカプセルに充填し、味、臭いが漏出しない「ルゴール液カプセル」を作製し、このカプセルの製剤としての安定性を確認することにより、ルゴール液カプセルの臨床における有用性を評価した。 【研究方法】 安定性評価のため下記の項目について試験を行った。またカプセルの材質(ゼラチンまたはHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース))、ルゴール液の溶媒中水分濃度、カプセル保管時の温度(4℃または室温)・遮光条件が安定性に及ぼす影響を検討した。試験期間はいずれも28日間とし、経時変化を測定した。 (1)カプセル外観の変化の評価 カプセルの変形、内容物の漏出等の有無を目視により判定した。 (2)カプセル内の有効ヨウ素濃度の定量 内服用ルゴール液中の有効ヨウ素含量を352nmにおける吸光度を測定し定量した。 【研究成果】 ゼラチンカプセルで調製したサンプルは全て試験期間中に内容物の漏出等の外観変化が認められた。一方、HPMCカプセルを用いて作製したサンプルでは、封入するルゴール液の溶媒を90%グリセロールとし、水分濃度を低下させた条件下では試験終了時まで外観に変化は見られず形状が維持された。またこれらのHPMCカプセルのサンプルにおいては、温度、遮光条件に関わらず、ルゴール液中の有効ヨウ素濃度に大きな変化が見られなかった。このことから、HPMCカプセルを使用し、ルゴール液中の水分含量を低く保つことで、ルゴール液のカプセル充填、ならびに長期保存は可能であることが示唆され、本製剤はルゴール液の服薬アドヒアランス向上において臨床上有用であると考えられた。
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