Outline of Annual Research Achievements |
【研究背景】がん放射線治療によって引き起こされる口腔粘膜炎は、頭頸部放射線療法時の殆どに発症し、口腔内から咽頭に至るまで重篤な粘膜障害を引き起こす。しかし、現在のところ有効な治療薬剤はなく、臨床では局所麻酔や鎮痛・抗炎症薬による対症療法が行われているに過ぎないことから、口腔粘膜炎用薬の開発・開拓が望まれている。放射線療法時の口腔粘膜炎増悪のメカニズムには、NF-κBの活性化や、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α等)の産生が大きく関連することが報告されているため、われわれは、高脂血症治療薬であるスタチン系薬剤に着目した。スタチン系薬剤には直接的な炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6およびTNF-α)の産生抑制や、メバロン酸経路の中間代謝産物であるゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)の枯渇による転写因子(NF-κB)の抑制を介した炎症性サイトカインの産生抑制作用があり、スタチン系薬剤はがん放射線療法時の口腔粘膜炎に対する有用性が期待される。【研究方法】雄性シリアンハムスターに対して35Gyの放射線を単回照射し(Day : 0)口腔粘膜炎を作成した。プラバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、Vehicleの4群に分け、Days : 0-13に薬剤を1日1回経口投与し、経時的に口腔粘膜炎スコア(0-5段階)を評価するとともに、Day : 14にチークポーチを採取後、炎症の指標として好中球MPO(ミエロペルオキシダーゼ)活性を測定した。【結果】口腔粘膜炎スコアを評価したところ、Day : 14においてVehicle投与群と比較し、プラバスタチン投与群では口腔粘膜炎スコアが有意に低下した(P<0.01)。また、Day : 14にチークポーチを採取して好中球MPO活性を測定したところ、vehicle投与群と比較し、プラバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン投与群のすべての群において有意に活性が低下した(それぞれP<0.01, P<0.01, P<0.05)。
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