「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)を基として「血液製剤の使用指針」、「輸血療法の実施に関する指針」が通知されているが、未だ十分な徹底がなされず特にアルブミン製剤の使用量が多いことが目立っている。さらに、日本は国際的に比較しても諸外国と比べてアルブミン製剤の使用量が多く、自国で使用する血液は自国で賄うというWHOの原則の上でも問題となっている。一方、血漿代用剤としてヒドロキシエチルデンプン製剤(HES)が本邦でも臨床使用可能であり、感染の危険がないことや安価なことなどの利点があるにもかかわらず出血傾向や腎機能障害などの副作用面に懸念があり十分利用されていないのが現状である。そこで本研究では千葉大学医学部附属病院でのデータを基にHESの使用量とアルブミンの使用量の推移を調査した。年間あたりのHES使用量とアルブミン使用量を手術件数で補正して比較した結果、両者の推移に明確な関係性を見出すことはできなかった。しかし、HESのうち分子量70kDaのものを除外して130kDaのHESに限定して比較した結果、手術1件あたりのHES使用量の増加に伴い、アルブミン使用量が減少する傾向がみられた。しかし現時点では限られたデータのみでの比較であり、引き続き本調査を継続することでその関連性を見いだせる可能性があると考えられた。同時にアルブミン製剤の代わりにHESを使用することの安全性についても明確にすることが必要であり、その結果を合わせることでHESの使用によるアルブミン製剤の適正使用につながると考えられる。したがって、腎障害をはじめとするHES製剤の副作用頻度についても調査を加える必要があると考えられた。
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