Outline of Annual Research Achievements |
近年の急速な高齢社会の進展に伴い, 慢性的に痛みを呈する変形性股関節症の有病率が高まっている。変形性股関節症の進行を予防するための治療として, 寛骨臼回転骨切り術が広く行われているが, 他の下肢関節手術と比較して術後筋力低下が著しく, 入院期間は長期にわたる。電気刺激を用いた筋力強化練習は, 術後の筋力を回復促進することが知られているが, 寛骨臼回転骨切り術後においては十分な検討が成されていない。本研究の目的は, 電気刺激装置を用いた筋力強化練習が, 寛骨臼回転骨切り術後の筋力を回復促進する効果を明らかにすることである。 当研究代表者所属施設にて, 偏心性寛骨臼回転骨切り術と通常理学療法を実施した患者を対照群とし, 同手術と通常理学療法に加えて電気刺激装置を用いた筋力強化練習を実施した患者群を実験群とした。電気刺激装置を用いた筋力強化練習は術後から退院日まで実施した。評価指標は, Hand-Held Dynamometerによる股関節周囲筋力値, 膝関節周囲筋力値, 下肢周囲径, 下肢関節可動域, 歩行速度, 痛みの程度(Visual Analogue Scale)とした。それぞれの評価は術前, 術14日後, 退院前に行い, 両群間で比較検討した。 術前, 術14日後, 退院前において, それぞれの評価指標について対照群と実験群を比較した結果, 両群間に有意な差は認められなかった。さらに, それぞれの評価指標について術前から術14日後の変化率, 術前から退院前の変化率を算出し, 両群間で比較した結果, 有意な差は認められなかった。 電気刺激を用いた筋力強化練習は, 筋出力の低い患者においても効果を発揮することが知られている。しかし, その練習方法は多岐に渡り, 一定した見解が得られていない。今後は詳細な練習方法について検討を加えることにより, さまざまな疾患に対する効果的で効率的なリハビリテーションの発展へ寄与するものと考える。
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