Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
エポキシ反応系中では、重合・架橋反応の進行に伴う濃度揺らぎの凍結により、網目サイズよりも大きなスケールの空間不均一性も誘起されると考えられる。このようなメゾスコピックな空間不均一性を明らかにし、不均一性と巨視的な性質との関係の理解ができれば、エポキシ樹脂の新たな設計指針が提案できる。本研究では、エポキシ樹脂の硬化過程における不均一性を理解し、不均一性が巨視的な特性に与える影響を明らかにすることを目的としている。昨年度までに、粒子追跡法に基づきエポキシ反応系中の局所領域における物性とその空間分布を解析し、硬化過程において空間的な不均一性が発現することを明らかにしている。さらに、硬化過程で発現した空間不均一性が硬化物の巨視的な物性に影響を及ぼすことが示唆された。本年度は、不均一性が破壊特性に与える影響を検討するため、異なる硬化過程を経由して得たエポキシ樹脂の分子鎖熱運動性ならびに膨潤破壊挙動を評価した。その結果、高温で硬化したエポキシ樹脂ほどガラス転移温度近傍における動的不均一性が大きいことが示唆された。動的不均一性はガラス状態で凍結されるため、破壊挙動に影響を及ぼすことが予想される。そこで、異なる温度で硬化して得た樹脂を良溶媒に浸漬し、その膨潤破壊挙動を観察したところ、硬化温度が高いほど、破壊に要する浸漬時間が短いことが明らかになった。また、接着界面近傍の膜厚方向におけるエポキシ樹脂の不均一性の非破壊評価手法を確立し、界面近傍におけるエポキシ樹脂はバルクとは異なる組成であることを明らかにした。本研究では、エポキシ樹脂を用いて材料設計を行う場合、系全体の平均的な構造や物性のみならず材料中における構造・物性の不均一性にも着目する必要があることを明らかにした。得られた知見は、熱硬化性樹脂の新たな設計指針に繋がると考えられる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Macromolecules
Volume: 52 Issue: 5 Pages: 2075-2082
10.1021/acs.macromol.8b02416
Polymer Journal
Volume: 51 Issue: 3 Pages: 359-363
10.1038/s41428-018-0129-4