Project/Area Number |
17740227
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Condensed matter physics II
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
瀧本 哲也 神戸大, 理学部, 研究員 (80397794)
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Project Period (FY) |
2005 – 2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2006)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | 充填スクッテルダイト化合物 / 金属絶縁体転移 / 十六重極子秩序 |
Research Abstract |
「研究目的」では、スピン秩序相付近と軌道秩序相付近の両方を扱える理論を構築し、これらのゆらぎからの様々な物理量への寄与を明らかにし、特に軌道自由度に関する量子臨界点付近での異常性を調べる、とした。報告者は対象物質として充填スクッテルダイト化合物を選んだ。この系は立方晶の結晶構造を持ち、希土類イオンの充填に伴ってf-電子の縮重度(軌道自由度)により多くの興味深い物性を示す。その中の代表物質の一つであるPrRu_4P_<12>は温度の低下に伴って63Kにおいて金属相から非磁性絶縁体相への金属絶縁体転移を示す。最近の実験結果によると、この低温相ではPrイオン周辺の対称性を保ったまま構造変化を起こし、二つの副格子から成っていることが示された。同時に、一方の副格子のPrイオンの結晶場基底状態は高温相と同じであるが、他方の副格子では第一励起状態と入れ替わっていることが観測された。従来はこの金属絶縁体転移にはf-電子は関わっていないと考えられていたため、これらの実験結果の解釈が問題とされていた。 報告者はこの現象に対して微視的理論を展開した。軌道縮退周期的アンダーソン模型から出発し、Schrieffer-Wolff変換を用いてスピン秩序相付近と軌道秩序相付近の両方を扱える有効ハミルトニアンを導出した。PrRu_4P_<12>に対してすでに知られている条件を課すと、有効ハミルトニアンは通常のf-電子と伝導電子の擬スピン間の交換相互作用項と、局所的な対称性を破らないf-電子の十六重極子と伝導電子の電荷密度の積に比例した項から成ることが示された。さらにPrイオンの結晶場基底状態が擬スピン一重項であることにより、擬スピン秩序転移が抑えられる一方で十六重極子秩序転移が誘発され同時に伝導電子の状態密度にエネルギーギャップが生じた。この秩序状態は上述の実験結果を矛盾なく説明するため、報告者はPrRu_4P_<12>の異常性である金属絶縁体転移がf-電子の内部自由度である十六重極子の反強的秩序によるものだと提案した。
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