ロッビア工房による施釉テラコッタ彫刻の制作技法研究-陶片の定量分析と再現実験
Project/Area Number |
17H00002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
哲学・芸術学
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
松本 隆 武蔵野美術大学, 造形学部共通彫塑研究室, 非常勤講師
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Project Period (FY) |
2017
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2017)
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Budget Amount *help |
¥520,000 (Direct Cost: ¥520,000)
Fiscal Year 2017: ¥520,000 (Direct Cost: ¥520,000)
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Keywords | ロッビア / 施釉テラコッタ彫刻 / 再現実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イタリア初期ルネサンスの彫刻家ルカ・デッラ・ロッビア(1399/1400-1482年)や、彼が創設した「ロッビア工房」による彫刻作品の再現制作を通じて、ルネサンス時代の施釉テラコッタ彫刻の制作技法を検証するものである。研究代表者はこれまでに素地の粘土の配合とその焼成法に関して調査を進めてきたので、今年度は特に釉薬の配合とその定着に主軸を置き、研究と実験を重ねた。ルネサンスの陶芸釉薬について詳細に記した理論書、ピッコルパッソの『陶芸三書』(1548年)は本研究の文献上の典拠として有用なものだが、その記述に含まれている「ワイン滓の灰」の実態と効果に関しては従来よく分かっていなかった。そこで本研究では、ワインの滓(酒粕)から作った灰を配合した原料で焼成実験をし、ガラスフリット(マルツァコット)を作成した。これに鉛と顔料を加えて釉薬とした。検証の結果、ワイン灰にはカリウムが多く含まれることが判明し、媒熔剤として強い作用があることが確認された。施釉焼成実験では、特定の釉薬と石灰質素地の組み合わせによって、ロッビアに見られる独特の発色や光沢が得られることが分かった。またルカ作《りんごの聖母》の実物大模刻像を用いて、刷毛による施釉方法を検証した。研究を通じ原材料、釉薬配合法、施釉法、焼成法の一部が明らかとなった。 この再現実験と並行して、ペルージャ大学教授ジェンティリーニ氏から提供された《ロッビア風の紋章断片》2点を観察・成分分析し、組成を明らかとした。研究協力者である藤﨑悠子がイタリアでの現地調査を実施した際、このデータはジェンティリーニ氏本人とも共有され、既存のデータとの比較から陶片のロッビア工房への帰属が確実となった。 また今年度の締めくくりとして、平成30年5月19日、本郷新記念札幌彫刻美術館において文化講演会「ルネサンス期フィレンツェのテラコッタ彫刻」を実施し、受給者と協力者の成果発表とした。
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Report
(1 results)
Research Products
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