本研究課題は、南蛮人燭台を対象として、桃山文化における「南蛮」の影響を研究し、16世紀後半~17世紀初頭の世界について、「日本」を起点にグローバルな視点から理解を深めるための中高生向けの教材・教案を開発することを目的とした。 南蛮人燭台は、主に織部焼で焼かれた燭台形の陶磁器である。実際の使用コンテクストは不明確であるが、「南蛮人」の姿を模し、頭に蝋燭を立てるようになっている。しかし、表現された顔・姿には多様性があり、いわゆる「黒人」や東南アジア系の人物と思われる表現がされたものも少なくない。つまり、南蛮人燭台は、当時の日本社会における「南蛮」認識を示す格好の資料であり、かつヨーロッパからアフリカ、東南アジアを経て日本へとやってきた「世界の一体化」の波を如実に示す資料ともなり得るものである。 そこで、本研究では、先行研究を検証するとともに、展覧会図録・発掘報告書などから資料を集成する一方、それらを所蔵する各地の美術館・博物館を訪れて実物を確認し、併せてキリスト教をはじめとする当時渡来した南蛮文化や、南蛮人燭台が製作された織部焼の生産体制について調査した。具体的には、2018年1月に南蛮人燭台を所蔵する天草キリシタン館などを訪れ、同年2月には土岐市美濃陶磁歴史館・織部の里公園、多治見市美濃焼ミュージアムなどで南蛮人燭台破片を含む織部焼の資料を確認し、またマスプロ美術館にて南蛮人燭台を実見した。さらに3月には茨木市立キリシタン遺物史料館にて南蛮文化資料を調査後、古田織部美術館で南蛮人燭台を含む織部焼資料を実見した。 一連の調査・研究によって、とくに南蛮人燭台の図像表現について新たな知見を得ることができた。そうした知見を元に、購入した南蛮人燭台を用いて、中学2年生を対象として授業を実践した。これらの成果は学会発表及び論文の形で公表すべく、準備中である。
|