Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, ソーシャルスキルと被受容感, 児童同士の相互作用に着目して, ソーシャルスキルに関するルーブリックを活用した協同学習が学習意欲を向上させるプロセスを検討し, 小学校における協同学習の進め方と学習意欲向上についての知見を得ることが目的であった。調査は小学6年生を対象に, ルーブリックを活用した協同学習実施前後の10月と12月に実施された。主な結果は以下の通りである。 (1)ルーブリックを活用した協同学習実施群は協同学習実施後に, ソーシャルスキルの下位尺度である「関係向上行動」得点, 被受容感, 相互作用の下位尺度である「機能的相互作用」得点, 学習意欲総得点及び, 「自律的学習行動」, 「積極的関与行動」, 「学習に対する自我関与」, 「学習効力感」の4つの下位尺度得点が有意に高くなっていた。一方, 従来型の一斉授業実施群では, いずれの得点にも有意な変化は認められなかった。(2)ルーブリックを活用した協同学習実施前後の学習意欲総得点の差と相互作用総得点の差, 相互作用総得点の差と被受容感得点の差に中程度の相関が認められた。(3)ルーブリックを活用した協同学習実施後の被受容感とソーシャルスキルの因子得点を独立変数に, 相互作用総得点を従属変数にして重回帰分析を行うと, ルーブリックを活用した協同学習実施後に高まっていた被受容感とソーシャルスキルの「関係向上行動」が有意に関連していた。 以上のことから, ソーシャルスキルに関するルーブリックを活用した協同学習の実施によって, 児童同士の相互作用が活発になり, 学習意欲に影響を及ぼすことが示唆された。また, 児童同士の相互作用は被受容感とソーシャルスキルの「関係向上行動」が規定因になっていることが明らかになった。受容的な環境のなかで, ルーブリックの活用によってソーシャルスキルを高めながら児童同士の相互作用が行われることで, 学習意欲が高まることが確認されたといえる。
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