Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】本研究では自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder : ASD)におけるスクリーニング手法の新たな判断ツールとして, 絵画欲求不満テスト(Picture Frustration Study : P-Fスタディ)の児童版に着目した. P-Fスタディ評価指標であり, 欲求不満場面における常識的な反応の程度である, 集団一致度(Group Conformity Rating : GCR)や, 満田ら(2009)の質的分析による評価不能反応(Unscorable : U反応)類別(1. 単純了解反応, 2. 場面理解失敗反応, 3. 説明不足反応, 4. 意味不明反応)を参考に中学生のASD者の反応特徴をコントロール群と比較検討して明らかにすることを目的とした. 【研究方法】対象は愛媛大学医学部附属病院精神科を受診したASD患者をASD群, 公立中学校普通級に在籍するコントロール群とした. 診断にはDSM-5を用いた. 対象者は, 言語能力は十分に発達しているが, コミュニケーションの困難さが顕在化しやすい中学生とした. 両群に対し, 本人はP-Fスタディおよびバールソン児童用抑うつ性尺度, その保護者には児童用自閉スペクトラム指数(The Autism-Spectrum Quotient : AQ)および対人応答尺度を実施した. またコントロール群は, 精神科既往歴のある者, AQ得点がカットオフ値以上の者は除外した. 得られたP-Fスタディの反応分類選別は臨床心理士3名による協議により行った. 【研究成果】ASD群16名(M:F=11:5, 平均13.63±0.60歳)と, コントロール群43名(M:F=24:19, 平均14.0±1.00歳, 研究協力者49名のうち6名除外)に対してMann-WhitneyのU検定を用いて比較検討を行った. P-FスタディのU反応数の2群間比較において, ASD群はGCR値が有意に低値で(p<.01), U反応数および意味不明反応(その場面状況とは全く関連性を見出せない反応である)数がいずれも有意に高値であった(p<.01). 【考察】GCRの低さや, U反応数の多さは小学生を対象とした先行研究を支持する結果となっており, 中学生においても同様にASD者の欲求不満場面の反応の偏りや, 社会性の未熟さの存在が推測された. 今後は対象者を一定にし, ASD者の意味不明反応の質的分析をコントロール群と比較しながら発展的に行うことが今後の課題である.
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