Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders : ASD)の診断や特性の把握を評価する手段が十分とはいえない. 我々はグッドイナフ人物画知能検査(Goodenough draw-a-man intelligence test : DAM)に着目して, ASDを診断する際の重要な手掛かりになりうるか検討した. 本研究では, 児童期のASD児と定型発達児のDAMIQおよびDAM評価項目の通過率を比較して, ASD診断のための指標としての有用性について検討することを目的とした. 【研究方法】 対象は愛媛大学医学部附属病院子どものこころセンターを受診した患者のうち、知的障害を伴わないASD児をASD群、公立小学校通常学級に在籍する定型発達児をコントロール群とした. 対象年齢はDAM対象範囲である小学校1年から3年生として, 両群に個別で人物画テストを行った. コントロール群の保護者には精神科受診歴の聴取、神経発達障害児の除外のために児童用AQ(Autism-Spectrum Quotient)への記入を依頼した. DAMIQおよびDAMの評価項目の通過率を算出して、2群間比較を行った. 【結果】 ASD群は9名(M:F=6:3, 平均8.29±0.95歳), 対象群は, 39名(M:F=19:20, 平均7.75±0.82歳)であった. DAMIQに関しては, ASD群と対象群とで有意差は認められなかった. DAM評価項目の通過率においては「衣服の全部(衣服に関する項目)」において、ASD群が有意に高かった. 【考察】 本研究では, DAMIQでは, ASD群とコントロール群で有意差は認められなかったが, 通過項目において有意差を認めた. DAMIQのみならず, 通過項目の検討を行うことで, ASD診断のための指標となりうる可能性が示された. 今後は, ASD群の症例数を増やして男女別に検討すること, 新版グッドイナフ人物画知能検査を用いて再検討すること, 通過項目の質的検討を実施することが課題である.
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