本研究の目的は、情緒・行動上の問題に加えて虐待体験や発達障害がある子どもが入所する児童自立支援施設における教育・支援効果を実証的に明らかにすることであった。児童自立支援施設は、児童福祉法44条に位置づけられた施設であり、情緒・行動上の問題を示す子どもが入所しており、特別な教育が提供されている。そこで、児童自立支援施設に入所する子どもの支援に関する記録を基に、入所時の状態像と退所時の状態像について検討を行った。知能検査の結果や各種心理テストを活用し評価を行ったところ、入所時よりも退所時で知能が上昇し、心理テストの結果でも改善が見られていた。具体的には、知的能力や学力面の向上、子どもの抑うつ症状の改善、自尊感情の上昇、トラウマ症状の改善などが示された。こうした子どもたちの変化は、日々の生活を通した直接的な支援、家族調整、環境調整がなされていることが関連していることを考察した。 また教育内容については、視覚的な映像教材を作成した。具体的には、起床、掃除、朝食、登校、授業、作業、就寝までの様子やトラブルの解決に関する実践的な方法である生活場面面接の様子を明らかにした。これによって、入所時および退所時の状態像の変化に関連する支援内容を示すことができた。 本研究によって行動上の問題を示す子どもへの児童自立支援施設における教育・支援効果の一端を示すことができた。一方、限られた対象者数であること、評価指標が限定的であること、退所後の予後が明らかにされていないことなどを改善していく必要がある。
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