Outline of Annual Research Achievements |
音読には様々な効果があり, 国語科の授業に取り入れられているが, 文章内容の把握や読み取り後のまとめ以外に, もっと意味深い効果が期待できるのではないか。学習過程で読み取る音読, 伝え合う音読で磨かれた音読こそ, 子どもの深い学びにつながるのではないか。そこで, 文章を読み取る段階, 読み取ったことを友達と伝え合う段階, 読み取ったことや伝え合ったことを表現する段階において, 視聴覚機器を活用して音読を録音し, 再生, 編集しながら読む速さや声の大きさ, 間の取り方等の変容を交流する実践に取り組んだ。 子どもたちの反応や変容から最も有効だったのは, タブレット端末の活用である。タブレットの音声編集アプリに1人ずつ物語文教材を音読し録音した。録音後, グループで互いの音読を聞き合い, 読み取った人物の気持ちや様子がより伝わるようにするにはどの部分がどう読めばよかったか話し合って, そのことを音声編集によって様々に試みた。特に, 間の取り方を変えることで作品世界が違って聞こえることに感受した子どもが多かった。録音した音声を聞いたり波形を編集したりすることで音読を客観的かつ視覚的に捉え, 間を取ることの重要性に着目することができた。編集した音声を聞いて自分の作品世界のイメージを新たにして音読を練習し, 録音して聞き合う活動を繰り返した。子どもたちは, 互いの録音データを見聞きしながら音読の変容を感じつつ, 人物の気持ちや様子の読み取りへ立ち返る話し合いも行えた。また, タブレットとテレビをつないで音読の波形を画面に映し出して全体交流もできた。 このように, 視聴覚機器を用いて, 音声言語を客観化, 視覚化することが可能となり, 子どもたちが再生, 編集しながら学習活動に役立てることができた。今回の研究を通して, 子どもたちが音読を読み取りや伝え合いに積極的に用いることができ, 音読を生かした深い学びを実現する授業の具体的な方策が見えた。
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